前回~ゼロから始める相続税入門(24)生前贈与の活用①(暦年課税と住宅資金の贈与の特例)
本日は、前回の生前贈与の活用の2回目になります。今回は配偶者控除の解説になります。
<贈与税の配偶者控除>
●概要
贈与税は、配偶者の生活基盤を安定させるという趣旨から、夫婦間で住宅などの贈与をしたときに贈与税を軽減させる優遇制度(贈与税の配偶者控除)を設けています。贈与税の配偶者控除は、夫から妻又は妻から夫へ、住宅あるいは住宅を購入するための資金を贈与したときは、2,000万円までは贈与税を非課税とする制度です。詳細は以下の表を参照ください。
●相続時
通常、生前贈与された財産のうち相続開始前3年以内に贈与されたものは、相続財産にプラスして相続税を計算します。しかし贈与税の配偶者控除の制度により贈与された財産は、相続開始前3年以内であっても相続税を計算するときには相続財産にプラスされません。
●居住用の不動産を贈与した時の配偶者控除
対象 |
婚姻届を提出している夫婦間の贈与 |
---|---|
要件 |
・婚姻期間が満20年以上 ・贈与を受けた配偶者が住む不動産か、それを購入するための現金である ・贈与を受けた年の翌年3月15日までにその不動産に住みその後も引き続き住む予定である |
制限 |
同じ配偶者からの贈与については、一生に1回しか使えません |
金額 |
2,000万円まで(基礎控除110万円の併用可) |
必要書類 |
・贈与の日から10日以後に作成された戸籍謄本又は抄本、戸籍の附票の写し ・居住用不動産の登記事項証明書 ・その居住用不動産に住んだ日以後に作成された住民票の写し(戸籍の附票の写しに記載されている住所が居住用不動産の所在場所である場合、住民票の写しの添付は不要) |
評価 |
居住用不動産を贈与する場合の価額は相続税と同じ評価方法となります ・土地:路線価or固定資産税の評価額に倍率を乗じる ・建物:固定資産税の評価額 ※小規模宅地等の評価減は使えません |
その他 |
・贈与を受けた年の翌年の確定申告期限内(2月1日~3月15日)に申告 ・不動産は、土地のみ、建物のみ、土地と建物など、どの組み合わせでも可能 ・贈与した不動産の所有権移転登記が必要となります(登記費用もかかる) |
タックスアンサー |
https://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4452.htm |
<しっかりとした検討を>
贈与税の配偶者控除を活用することでどのような場合でも相続税対策になるのでしょうか。以下のような場合には相続税対策で必ずしも有利にならないこともありますので、しっかりとした検討をしましょう。
●相続税がかからない場合
生前に贈与をしておけば相続財産から外れるため、相続税の節税になりますが、贈与税が非課税となるだけで、不動産の名義を変更する際に必要な登録免許税と不動産取得税は通常通り課税されます。これは相続で取得したよりも贈与で取得した方が多くかかります。(以下参照)
■登録免許税
固定資産税の評価額の2%(相続の場合には0.4%)
■不動産取得税
固定資産税の評価額の3%(相続の場合にはかからない)
よって、相続税がそもそもかからないのであれば、それなりに経費がかかる贈与税の配偶者控除を利用するメリットはありません。
●贈与を受けた配偶者が先に亡くなった場合
贈与税の配偶者控除の前提として「贈与した側の配偶者が先に亡くなる」ことを想定しています。しかし財産をあげた側の配偶者が先に亡くなるとは限りません。もし、財産の贈与を受けた側の配偶者が先に亡くなれば贈与した財産が相続により財産をあげた配偶者に戻り、不動産の名義変更のコストがかかってしまいます。利用の際には十分な検討の際には注意が必要でしょう。
その他、ご不明点等ありましたら、お気軽に高齢者住宅仲介センター日本橋店にお問い合わせください。
(担当:満田(ミツダ)03-5201-3645)
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