~前回~有料老人ホーム入門⑲(介護付有料老人ホームとリハビリテーション)
本日は有料老人ホームと相続の話について解説させて頂きます。
■有料老人ホームは相続財産になるか
有料老人ホームの契約方法として、利用権契約と賃貸借契約があります。利用権契約の場合は、入居時に何千万円払っていたとしても、所有権を有しているわけではないため、当然有料老人ホームの部屋などは相続財産にはなりません。
ただし、入居時に支払った一時金に払い戻しがある場合、入居一時金の負担者によって課税関係の取り扱いが異なります。
■有料老人ホームの入居一時金の取り扱い
①負担者が本人の場合
入居一時金の負担者が本人であれば、有料老人ホームに対する預け金という扱いになり、相続の発生時点で返還される金額が残っている場合は、その返還金相当額が相続財産になります。
②負担者が本人以外(贈与があったと認められるケース)
例えば、息子さんが贈与契約等により親の入居一時金を支払った場合はどうでしょうか?その場合は、「贈与税の非課税財産」の規定により、「扶養義務者」である子が生活費に相当する老人ホームへの入居一時金を支払い、その金額が過度に高額でない支出であるときは「贈与税の非課税財産」に該当し、贈与だけれども贈与税は課されないことになります。
ここで通常必要と認められるものを超えるものである場合には、その贈与による利益の額は贈与税の課税対象とされます。さらに相続開始前3年以内の贈与に該当するときは、相続税申告において生前贈与加算の対象になります
過去の裁決事例では、夫が夫婦二人分の入居一時金を負担し、先に夫が死亡した場合、妻分の入居一時金相当額が夫から妻に贈与されたと認定されたものの、その贈与は生活に通常必要な費用の負担であり贈与税の非課税財産であるため、相続税申告の生前贈与加算の対象にならないとされたケースがありました。
③負担者が本人以外(贈与があったと認められないケース)
入居者と一時金の負担者との間で贈与契約等が無く、贈与を受けたと認定できない場合では、入居一時金を支払った時点での課税関係は生じず、入居一時金の返還請求権は入居一時金の負担者に帰属するものと考えられます。よって入居者が死亡した際には、相続の問題にはなりませんが、負担者が死亡した場合には、死亡時の入居一時金の返還金相当額が被相続人である入居一時金の負担者の相続財産となります。
■有料老人ホームと小規模宅地の特例
・小規模宅地の特例の詳細→ゼロから始める相続税入門(16)小規模宅地の特例とは(自宅の土地は80%減に)
以下の2つの要件を満たす場合に、小規模宅地等の特例を適用できます。
①被相続人に介護が必要なため、以下のいずれかの施設に入所したものであること。
イ) 認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居(老人福祉法第5条の2第6項) ロ) 養護老人ホーム(老人福祉法第20条の2) ハ) 特別養護老人ホーム(老人福祉法第20条の5) ニ) 軽費老人ホーム(老人福祉法第20条の6) ホ) 有料老人ホーム(老人福祉法第29条第1項) ヘ) 介護老人保健施設(介護保険法第8条第27項) ト) サービス付高齢者向け住宅(ホ以外 高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条第1項) チ) 障害者支援施設・共同生活援助を行う住居(障害者総合支援法第5条第11項、15項) |
上記のような条件のため、もし介護保険を利用しない状態で有料老人ホームへ入居する場合は、相続の際に小規模宅地の特例が使えないこともあるため十分留意する必要があります。(相続発生時に介護認定をもらっていれば入居時に介護認定をもらっていなくても良い)
■ちなみに有料老人ホームは介護付きでも住宅型でも良いか
上記では有料老人ホームとあるが、介護付(特定施設)でも住宅型でも良いかという論点があるかと思います。老人福祉法第29条第1項は以下のようになります。
第二十九条 有料老人ホーム(老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜であつて厚生労働省令で定めるもの(以下「介護等」という。)の供与(他に委託して供与をする場合及び将来において供与をすることを約する場合を含む。)をする事業を行う施設であつて、老人福祉施設、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居その他厚生労働省令で定める施設でないものをいう。以下同じ。)を設置しようとする者は、あらかじめ、その施設を設置しようとする地の都道府県知事に、次の各号に掲げる事項を届け出なければならない。
第29条第1項は、有料老人ホームの定義が書いてあり、特段介護付や住宅型ということを定めたものでないため、介護付でも住宅型でも良いと解釈できるのではないかと思います。
関連記事:ゼロから始める相続税入門(18)小規模宅地等の特例とサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
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