~前回~ぷちコラム⑬土地活用と高齢者住宅
本日テレビ朝日のワイド!スクランブルで「無届け有料老人ホームに対する集団訴訟」のニュースに関して、高齢者住宅の実情をスタジオで解説させて頂きました。
すべてを伝えきれなかったのでここで補足をさせて頂きます。
■集団訴訟の概要
大阪市内の高齢者マンションで虐待があり、元入居者が裁判を起こしたという事象が発生しました。
虐待があったのは、7年前にオープンした高齢者用住宅(この住宅のHPではドクターズマンションと呼ばれています)で、1階には診療所、4階には医師が居住しており、高度な医療体制と手厚い介護をいうものを宣伝していたということです。
しかし、5人の元入居者は、経済的虐待、介護放棄といった虐待を受けていたとして訴えを起こしました。
以前に入居されていた家族のインタービューや自治体の立ち入り調査で、以下のことが確認されています。
・職員がころころ変わる。
・手足をくくられて身体拘束をずっとされていた。
・部屋が汚くて狭い
・胃ろうのチューブを交換していない
・機械浴設備がない
・エレベーターにストレッチャーが入らない
そしてさらには入居者の金銭(1900万円)も不当に領得されたということも明らかになったそうです。
この高齢者用住宅は、外形上は介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅のように見えますが、法律上は普通の賃貸マンションであったそうです。したがって行政による監視の目が十分に行き届かないためにこのような事態が起こったと考えられます。
■無届け有料老人ホームとは
まず通常の有料老人ホームの定義を確認してみましょう。
有料老人ホームとは、老人を入居させ、入浴、排せつ若しくは食事の介護、食事の提供又はその他の日常生活上必要な便宜の供与をする事業を行う施設であり、老人福祉施設、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う住居等でないものをいいます。
有料老人ホームに該当する場合は、あらかじめ都道府県知事へ届け出る義務があります。したがって有料老人ホームであれば、しっかりとした基準等が定められていますし、自治体による監査もありますので、一定のサービス水準は保たれます。
今回のケースは、高齢者の方を入居させていますが、あくまで賃貸借の契約のみで入居させ、食事の提供や介護サービスとは別契約で結んでいます。そうしますと定義によるサービスの提供はおこなっていないので、有料老人ホームには該当しないという理屈になります。しかしHPで介護や医療がついていて有料老人ホームのような宣伝をしていて、実際は普通の賃貸住宅であったというのは悪質であると思います。介護付有料老人ホームであればきっちりとしたルールがあるのですが、一般の賃貸住宅では行政の目も行き届かないのでこのような最悪の事態が起こってしまいました。
このような高齢者を専用に入居させ、届け出などをしていない高齢者住宅というのは、相当数存在します。私も伺ったことがあります。しかし私が伺ったところは、今回のケースと同様医療法人が運営していましたが、とても管理の行き届いた高齢者住宅でした。ですので、一概に届出をしていない高齢者住宅が悪いというわけではありません。しかし、監視の目がないため、運営している法人によっては、バラつきが出てしまい、悪質なケースも見受けられるということです。
■無届け有料老人ホームの背景
既存のマンションを高齢者向けにしようとした際に、サービス付き高齢者向け住宅のハード要件(バリアフリー構造等)を満たさない場合にこのような事態になるケースが多いです。こうした高齢者住宅は、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームより低価格で利用できるケースも多く、有料老人ホームやサ高住にも入居できず、低価格で利用できる特別養護老人ホームに入居できないという方の受け皿にもなっているという現実があります。
■ドクターズマンションなどのネーミング
今回のケースのように「ドクターズマンション」といった名前で医療法人が運営しているということは、家族の方に安心感を与えます。現状、介護付有料老人ホームでも看護師が24時間常駐というところが少ない時代です。医師が同じところに住んでいるというのは大きな付加価値です。
ちなみに介護付やケア付きとついた場合は、介護保険上の特定施設にあたるため、介護サービスがついた介護付有料老人にあたります。
■入居前に気をつけること
無届けのホームだけなく、高齢者施設全般に言えることになりますが、高齢者住宅・施設に入居するにあたっては以下のことに気をつけましょう。
・自身の目で確かめる
パンフレットだけの情報に惑われず、実際に見学に行って自分の目で確かめるということが大事です。その際に、異臭がしないか、掃除がきちんとされているか、サービスが適切に行われているかなどをしっかりチェックしましょう。
・先入観をなく考える
さきほどの例のように、医療法人だから、高額な費用を払っているから大丈夫、というような先入観をなくすことが大事です。
・入居後も家族がしっかり会いに行く
施設に入居したからと行って安心せず、入居には会いに行くことが大事です。入居者も嬉しいでしょうし、家族が会いに行くというのは、施設側への抑止力にもなります。
その他、ご不明点等ありましたら、お気軽に高齢者住宅仲介センター日本橋店にお問い合わせください。
(担当:満田(ミツダ)03-5201-3645)
次回はぷちコラム⑮高齢者急増中でも会員減る老人クラブ~世代間交流を考える~です。
<高齢者施設の種類>
介護保険3施設 | 公的な低額施設・住宅 | 民間運営施設 |
①特別養護老人ホーム | ④養護老人ホーム | ⑨グループホーム |
②介護老人保健施設 | ⑤軽費老人ホーム(A型・B型) | ⑩有料老人ホーム |
③介護療養型医療施設 | ⑥都市型軽費老人ホーム | ⑪サービス付き高齢者向け住宅 |
⑦ケアハウス | ⑫東京シニア円滑入居賃貸住宅 | |
⑧シルバーハウジング | ⑬地域優良賃貸住宅 | |
⑭シニア向けマンション(分譲) |
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有料老人ホーム入門
■サ高住入門
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・①概要
・②現状の数と将来推移
・③サービスとは?
・④サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの違い
・⑤メリット・デメリット
・⑥ご夫婦部屋について
・⑦入居条件
・⑧食事について
・⑨併設施設
・⑩地域と月額料金
・⑪退去要因
・⑫サービス付き高齢者向け住宅と医療行為
・⑬契約関連その①
・⑭契約関連その②
・⑮安否確認
・⑯サ高住と認知症
・⑰サ高住と在宅療養支援診療所
・⑱東京都における独自ルール
・⑲お酒とタバコ
・⑳よくあるクレーム
・(21)サ高住とペット
・(22)サ高住と特養の入所待ち
・(23)サ高住の運営会社の業種について
・(24)(サ高住の特定施設とは)
・(25)実態調査①入居率・入居者像・入居動機
・(26)実態調査② 職員体制及び状況把握・生活相談サービスの内容
・(27)評価サイト・ランクサイト等について
・(28)サ高住と小規模多機能型居宅介護
・(29)サ高住と高円賃・高専賃・高優賃
・(30)実態調査③ 医療関連
・(31)サ高住と定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・(32 )入居の準備-必要な手続き・必要なもの-
・(33 )サ高住と訪問介護
・(34)サ高住の探し方
・(35)サ高住は終の棲家になり得るか
・(36)サ高住の増加理由[補助金・税制優遇・土地活用]
・(37)サ高住に入居するまでの流れ
・(38)動画で見るサ高住
・(39)サ高住のよくある質問・相談【厳選32】
・(40)サ高住の費用はいくらくらいか(初期費用・月額費用)
・(41)ノンストップ【サ高住特集のダイジェスト・補足説明】
・(42)サ高住のルールに共通指針(指導監督・ガイドライン)
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