~前回~有料老人ホーム入門⑧(介護付有料老人ホームのメリット・デメリット)
本日は有料老人ホームの入居一時金と償却について解説したいと思います。
入居一時金は有料老人ホームの料金形態の一部です。これに関して、今までトラブルが頻繁に発生していました。そこで、2013年の閣議決定で法改正がなされることとなったのですが、以下はその解説です。
まずは各用語の定義を確認しましょう。
<入居一時金について>
入居一時金とは、契約方式で利用権方式をとった場合に、入居後の一定期間の居住費を事前に支払うもので、有料老人ホーム特有のシステムです。終身利用権の費用としての位置づけとなっています。この入居一時金は、0円から数千万円のところもあり、年齢によって金額設定を分けているところなどもあり、様々です。
関連記事→②契約方式・利用料の支払方式
<償却とは>
入居一時金には、償却期間が定められており、償却期間が終了する前に退去された場合に未償却部分が返還されるようになっております。償却期間や償却方法なども、有料老人ホームによって様々です。
2割~3割を初期償却として入居時に(クーリングオフ制度があるため91日目)償却し、5~10年の償却期間で均等割で償却している有料老人ホームが多いです。しかし中には全額初期償却する有料老人ホームもあります。
<クーリングオフ制度>
有料老人ホームにはクーリングオフ制度が設けられています。有料老人ホームのクーリングオフ制度とは、入居して90日以内に何らかの理由により退去した場合、入居金の全額(家賃は除く)が返還されます。クーリングオフの対象を入居一時金全額対象としているところや、返還金制度適用の終身利用権や前払い分の施設利用料、介護一時金などのみを対象としているなど、都道府県によって異なってきますので、クーリングオフの対象となる範囲を確認しておく必要があります。
<保全措置>
有料老人ホームは民間の会社などが経営しているので、倒産する可能性もゼロではありません。2006年4月移行に開設されたホームには、500万円を上限に前払い金を保全することが義務付けられています。しかし、それ以外のホームの中には、保全措置をとっていないところもありますので、保全措置の有無や金額についても契約時に確認する必要があります。
また、公益社団法人全国有料老人ホーム協会に加盟している有料老人ホームの場合は、入居者生活保証制度が設けられているため、仮に有料老人ホーム側で返却不能となった場合であっても、この全国有料老人ホーム協会から返金されます。入居候補先が同協会の加盟業者かどうかもあわせてチェックしておくようにしましょう。
→公益社団法人全国有料老人ホーム協会の該当ページ
<入居一時金の今後>
老人福祉法が改正(2011年6月成立)され、事業者が受領できる前払金は、「家賃、敷金及び介護等その他の日常生活上必要な便宜の供与の対価」(以下「家賃等」)とされ、「権利金その他の金品」名目での受領が禁止されました。(老人福祉法第29条第6項)
(施行日は平成24年4月1日ですが、既存施設には3年間の経過措置があるため、平成27年3月31日までは従来のままでも可能です。)
どういうことかというと、今までの入居一時金の中には、施設を利用するための権利が含まれているところが大半でしたが、それが禁止され、家賃等に限定されました。有料老人ホームの入居一時金が高額であったのが、この権利の部分だったので、それが廃止となったのは非常に大きな影響が考えられます。また、入居一時金が家賃等の前払金に限定されたことにより、前払金は預かり金であり、初期償却が認められる性格のものではなくなると考えられています。
既に東京都は、「東京都有料老人ホーム設置運営指導指針」を改正し、「前払金が家賃等の対価であることに照らし、前払金の全部又は一部を返還対象としないことは、適切でないこと」(「9.利用料等 (4)前払金 ウ」)との条項を設けました。この条項は、実質的に前払金から初期償却を行うことは不適切との趣旨です。指針に強制力はありませんが、東京都が「前払金から初期償却を行うことは不適切」との趣旨を明確にしています。
上記の改正は、既存施設では平成27年3月31日まで経過措置があるため料金設定を変更しているところはまだ少ないですが、今後料金設定の変更がなされていくため留意する必要があります。
その他、ご不明点等ありましたら、お気軽に高齢者住宅仲介センター日本橋店にお問い合わせください。
(担当:満田(ミツダ)03-5201-3645)
次回は有料老人ホーム入門⑩(パンフレットの見方のポイント・注意点)です。
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