~前回~遺言入門⑥(遺言の執行とは)
前回は遺言の執行について解説させて頂きました。本日は『遺言と遺留分』について解説させて頂きます。
<遺言と遺留分>
遺言は、自分の財産を、その死後どのように処分するかをあからじめ決めておく制度です。したがって本人の自由意思によって好きに決めていいわけです。極端な話をすれば、3人の子供がいる場合でも「次男に全財産を譲る」という指定をすることができます。しかし、この場合に残りの2人の子供があまりに不合理です。そこでこのような場合に、妻子等の相続人を保護するためにその者に分配される遺産の割合を最小限度確保しようというのが遺留分の制度です。
<遺留分とは>
遺留分とは、相続人が必ず相続できる財産の取り分です。
■遺留分が主張できる人
・配偶者
・直系卑属(子・孫など自分より後の世代で、直通する系統の親族)
・直系尊属(父母・祖父母など自分より前の世代で、直通する系統の親族)
※兄弟姉妹には遺留分はありません。
■遺留分の割合
・基本は法定相続分の1/2
・直系尊属(父母)のみの場合は法定相続分の1/3
■遺留分の計算基礎となる財産
相続開始時において有した財産の価格に、贈与した財産(相続開始前1年間のもの)の価格を加え、その中から債務を全額控除したものになります。
■民法で定められた遺留分
①相続人が配偶者のみ 配偶者の遺留分=被相続人の財産×1/2 ①相続人が子供だけ 子供1人分の遺留分=被相続人の財産×1/2×(1/子供の人数) ①相続人が配偶子と子供 配偶者の遺留分=被相続人の財産×1/2×1/2 子供1人分の遺留分=被相続人の財産×1/2×1/2×(1/子供の人数) ①相続人が直系尊属だけ 父(又は母)だけの遺留分=被相続人の財産×1/3 ①相続人が配偶者と直系尊属 配偶者の遺留分=被相続人の財産×2/3×1/2 父(又は母)だけの遺留分=被相続人の財産×1/3×1/2 両親1人(どちらも健在)の場合=被相続人の財産×1/3×1/2 |
<遺留分減殺請求について>
■遺留分減殺請求とは
遺言などの相続分の指定、遺贈、生前贈与などで遺留分の侵害があったとしても、無効となるわけではありません。
遺留分が侵害されている場合は、侵害された遺留分を取り戻す方法として「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」があります。
具体的には、遺留分を侵害された相続人が、遺留分を侵害して財産を受け取っている相続人に対して「遺留分に当たる財産を渡してください」ということを意思表示します。
■遺留分減殺請求の方法
遺留分減殺請求をする時点で、侵害されている遺留分の金額を出す必要はありません。具体的な金額の算出は複雑で困難な場合もありますので、計算はあとでも構いませんので、遺留分が侵害されている恐れがある場合であれば、まず遺留分の減殺請求をします。請求の方法は、必ず書面(配達証明を付けた内容証明郵便)で行うようにします。遺留分減殺請求を受けた相続人は、これを拒むことはできず、遺留分に該当するだけの財産を請求者に渡す必要があります。
遺留分減殺請求者に渡す財産は、原則として現物を返還しますが、現物による返還が難しい場合は現金による返還をすることもできます。遺留分として何をどれだけ返済するのか、実際には請求者と請求を受けた相続人で協議をすることになります。
当事者同士で話し合いがつかない場合は、家庭裁判所の調停を利用することになります。
■遺留分減殺請求が可能な期間
遺留分減算請求には、請求可能な期間が設けられており、次のいずれかの期間がすぎると遺留分を侵害されていても請求することが出来ません。
・相続が開始され、遺留分を侵害している贈与や遺贈があったことを知ったときから1年
・相続開始のときから10年
<まとめ>
遺言を作成するときは、あらかじめ遺留分を考慮した上で作成することが賢明です。あとになって争いにならないように、遺言は誰が見てもそれが最良だと思われるようなものであることが望ましいでしょう。
<用語解説>
・相続人の範囲 配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。①~③のうち、順位の高い人がいた場合、順位の低い人は相続人になれません。 ①被相続人の直系卑属(子・※孫) ②被相続人の直系尊属(父母・※祖父母) ③被相続人の兄弟姉妹 ※孫は子が、祖父母は父母が亡くなっている時に相続できます。 ・法定相続分 ①配偶者と子供が相続人である場合 →配偶者1/2 子供(2人以上のときは全員で)1/2 ②配偶者と直系尊属が相続人である場合 →配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3 ③配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合 →配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4 |
ご不明点等ありましたら、お気軽に高齢者住宅仲介センター日本橋店にお問い合わせください。
(担当:満田(ミツダ)03-5201-3645)
次回は遺言入門⑧(遺言の撤回・変更について)です。