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~前回~成年後見制度入門④(成年後見制度と日常生活自立支援事業との違い)
本日は任意後見人の職務、すなわち任意後見人が行えることについて解説させて頂きます。
・成年後見制度入門③(任意後見制度とは)
<任意後見人の職務>
任意後見制度というものは、民法上の「委任」と「代理」に基づくものであり、契約によるものです。よって任意後見人の職務の範囲については、当事者の合意によるものになります。すなわち、当事者の地位や、生活状況、財産状況、契約締結の動機・目的によって異なるものです。これらの事情を踏まえた上で、委任者の意図を十分加味し、任意後見人の職務の範囲を決めることになります。
<職務の一例>
■財産の管理
●財産の保全 ●金融機関との預貯金取引 ●定期的な収入の受領、定期的な支出・費用の支払い ●生活費の送金、生活に必要な財産の購入 ●借地及び借家契約に関すること ●遺産分割などの相続に関すること ●保険契約に関すること ●その他 |
■介護や生活面の手配
●各種登記の申請、住民票、戸籍謄本・登記事項証明書、その他行政機関発行の証明書の請求及び受領 ●郵便物の受領 ●要介護認定の申請、認定に関する承認、異議申し立てに関すること ●介護契約、その他福祉サービスの利用契約 ●有料老人ホームの入居契約を含む福祉関係施設への入所に関する契約、その他の福祉関係の措置等に関すること ●国や都道府県等の行政機関への申請、行政不服申し立て ●居住用不動産の修繕に関すること ●医療契約、入院契約に関すること ●その他 |
<任意後見人の職務の限定>
任意後見人の職務を限定することも当然できます。
①代理権限を制限する方法
代理権限を制限する方法として例えば、「財産管理事務の中には、不動産の処分を含まない」「生命保険の締結・変更は含まない」「高額な有老老人ホームへの入所を含まない」と明示することで、限定することができます。
他には、「○○銀行△支店の委任者名義の普通預金口座1234から月額合計○○万円を限度とする払い戻しとする」というような制限も可能です。
①任意後見監督人(あるいは第三者)の書面による同意を要する方法
任意後見制度は、任意後見監督人が必ず選任されます。この任意後見監督人の同意を要するということでの制限も可能です。例えば、以下のような事項です。
○不動産の購入及び処分
○福祉関係施設(有料老人ホームも含む)への入所に関する契約の締結、変更及び解除
○住居等の増改築及び大修繕に関する契約の締結、変更及び解除
○複代理人の選任
<委任契約及び任意後見契約公正証書の例>
委任契約及び任意後見契約公正証書の例(松戸公証人役場)
代理権目録のところで、任意後見人の職務を記載しています。またこちらの例では、「不動産の購入、売却、贈与、その他重要な財産の処分」「住居等の新築、増改築に関する請負契約の締結」については、任意後見監督人の書面による同意を要する旨を記載しています。
<任意後見から法定後見への切り替え>
任意後見人に取消権はありませんので、被後見人が契約したことについて取消すことは出来ません。したっがって状況によっては、任意後見から法定後見に切り替えが必要なこともあります。
ご不明点や詳細については、お気軽に高齢者住宅仲介センター日本橋店にお問い合わせください。
(担当:満田(ミツダ) 03‐5201‐3645)