前回⇒年金のお話(10)被保険者・受給権者が亡くなった場合の年金①概要
今日は年金のお話です。
前回に引き続き、被保険者または年金受給者が亡くなった場合の年金について解説します。
今回は遺族基礎年金についてです。
遺族基礎年金は被保険者等の死亡を事由として支給される年金であり、公的年金の1階部分である「国民年金法」において定められています。
遺族基礎年金は、日本国内に住所を有する20歳以上の人が亡くなった場合に、その遺族が受給できる可能性があります。
では具体的にどのような要件を満たしていれば遺族基礎年金は支給されるのか、以下で確認しましょう。
<支給要件>
1.亡くなった人の要件
遺族基礎年金は、以下①~④の人が亡くなった場合に、その方の遺族に支給されます。
①被保険者
②被保険者であった者で、日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の者
③老齢基礎年金の受給権者
④老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている者
②は何なのかですが、これは過去の年金法の改正により、老齢基礎年金の「支給開始年齢が65歳に引き上げられた」一方で、保険料を支払うのは「60歳に達するまで」のままであるため、両者の間にタイムラグがあることから設定されている規定です。
ちなみに厚生年金の場合、年金の支給開始年齢は60歳から65歳へと段階的に引上げられていますが、一方で、保険料の支払いは70歳に達するまでとされています(参考⇒年金のお話(3)厚生年金保険の適用事業所と被保険者)。
③と④はこれ以上の要件は求められていませんが、①と②は加えて保険料納付要件が求められます。
2.保険料納付要件
保険料納付要件とは保険料の納付済期間に関する要件で、具体的には以下のようなものになります。
・初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの国民年金の被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が3分の2以上であること
たとえば被保険者期間が20年である人は、免除期間がない場合、13年4ヶ月分の保険料を納付していなければならないということです。
この保険料納付要件には以下のような特例も認められています。
・死亡日が2016年(平成28年)4月1日前にである場合、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの1年間のうちに保険料を滞納している期間がないこと。
・ただし、当該死亡日に亡くなった方が65歳以上であるときは、この特例を受けることはできません。
3.遺族の範囲
遺族の範囲は亡くなった方の妻、または子とされています。
ただし、制度改正により、2014年(平成26年)4月1日以後は、夫も遺族の範囲に含められることになりました(参考リンク⇒年金制度の改正について)。
遺族はそれぞれ以下の要件を満たしていることが必要とされます。
共通の要件 | 亡くなった方により生計を維持していたこと。 |
妻(夫)の要件 | 下記の「子の要件」を満たしたこと生計を同じくしていること。 |
子の要件 | ①18歳3月31日以前であること。 ②20歳未満であって、障害等級1級または2級の障害にあること。 ③ ①、②のいずれかであり、かつ、現に婚姻をしていないこと。 |
妻が遺族基礎年金の受給権を有する場合は、子の遺族基礎年金は支給停止されます。
4.受給額
平成24年度の遺族基礎年金は次の金額となります。
たとえば子が3人いる場合は、786,500+226,300+226,300+75,400=1,314,500円 となります。
5.失権
以下の事由により遺族基礎年金の受給者は失権します。
①死亡したとき
②婚姻をしたとき
③直系血族または直系姻族以外の養子となったとき
④子が、上記の「子の要件」を満たさなくなったとき
また、全ての子が失権した場合は、妻(夫)も失権します。
以上が遺族基礎年金についての簡単な解説となります。
これに加えて、亡くなった方が厚生年金の被保険者であれば「遺族厚生年金」「中高齢寡婦加算」などを受給できる場合があります。
また、亡くなった方が厚生年金含む被用者年金各法の被保険者でない場合、すなわち国民年金の第1号被保険者である場合は、遺族基礎年金に加えて「寡婦年金」や「死亡一時金」を受給できる場合があります。
これらについての詳細は次回以降といたします。
概要のみであれば遺族年金の第1回をご参照ください⇒年金のお話(10)被保険者・受給権者が亡くなった場合の年金①概要”
次回の年金記事は年金のお話(10)被保険者・受給権者が亡くなった場合の年金③遺族厚生年金”です。
過去記事はこちら→年金のお話(まとめ)
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