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年金のお話(10)被保険者・受給権者が亡くなった場合の年金③遺族厚生年金

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今日は年金のお話の続きです。
前回の年金⇒年金のお話(10)被保険者・受給権者が亡くなった場合の年金②遺族基礎年金

年金のお話(10)では年金に加入しているご家族が亡くなった際に、どのような場合であれば遺族年金を受給できるのかについて解説しています。
ご家族が亡くなるというのは、そのご家族が元気なうちにはあまり考えたいことではありませんが、予め考えておくことで、不測の損害をこうむったり、得られるはずの利益を逃してしまうことを避けられるかもしれません。その後の生活設計にも影響してくるでしょう。
このブログで提供する情報がそのような場合の「備え」となれれば幸いです。

その他のカテゴリーもあわせてご参照ください。
相続・遺言
高齢者と税金
財産管理全般


さて、今回のテーマは「遺族厚生年金」です。
遺族厚生年金は、公的年金の2階部分である「厚生年金」で定められた遺族年金であり、主に厚生年金の適用事業所に雇用されている・雇用されていた方が亡くなった場合に、その遺族に支給されます。
高校生以下の子供がいることを要件とした遺族基礎年金と異なり、遺族厚生年金の支給対象はより広いものとなっていますが、具体的にはどのような場合に支給されるのか、以下で確認しましょう。

<支給要件>
1.亡くなった人の要件
遺族厚生年金は、以下①~⑤の人が亡くなった場合に、その方の遺族に支給されます。

①被保険者(参考⇒年金のお話(3)厚生年金保険の適用事業所と被保険者
②被保険者だった人が、被保険者だった期間に初診日がある傷病で、初診日から5年以内に亡くなった場合
③障害等級1級・2級の障害厚生年金の受給権者
④老齢厚生年金の受給権者
⑤老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている者

①~③を「短期要件」、④、⑤を「長期要件」といいます。
①、②は上記に加えて保険料納付要件が求められます。これは遺族基礎年金と同様です。

2.保険料納付要件
・初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの国民年金の被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が3分の2以上であること

・死亡日が2016年(平成28年)4月1日前にである場合、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの1年間のうちに保険料を滞納している期間がないこと。ただし、当該死亡日に亡くなった方が65歳以上であるときは、この特例を受けることはできません。

いずれかを満たしていることが必要となります。

この要件は遺族基礎年金と全く同じですね。
なお、厚生年金の保険料納付要件の判定も、国民年金の被保険者期間全体で判定します。

3.遺族の範囲
(1)遺族の範囲
遺族の範囲は亡くなった方の配偶者、子、父母、孫、又は祖父母が対象となります。
具体的な要件は以下のようになります。

共通の要件亡くなった方により生計を維持していたこと。
妻の要件 特になし(生計維持のみ)
⇒遺族基礎年金と異なり、「下記の要件を満たす子がいる」という要件もありません。
夫、父母、祖父母の要件死亡当時55歳以上であること(支給開始は60歳から)。
子、孫の要件 ①18歳3月31日以前であること。
②20歳未満であって、障害等級1級または2級の障害にあること。
③ ①、②のいずれかであり、かつ、現に婚姻をしていないこと。
障害等級についてはここでは省略します。なお、ここでの障害等級は、労災保険における障害等級とは別の物なので注意しましょう。

(2)受給順位
遺族には受給の優先順位があります。
(1)の条件に該当する人でも、その人より優先順位の高い遺族がいる場合、優先順位の低い人は支給の対象とされません。

第1順位配偶者、子
第2順位父母
第3順位
第4順位祖父母

子に対する遺族厚生年金は、妻が遺族厚生年金の受給権を有する間は支給を停止されます。
夫に対する遺族厚生年金は、子が遺族厚生年金の受給権を有する間は支給を停止されます。
この場合は優先順位が低い場合と異なり支給が停止されるだけなので、たとえば妻が失権した場合は子への支給が再開されることになります。

4.受給額
基本的には老齢厚生年金の報酬比例の額の4分の3に相当する額となります。

平均標準報酬額 × 5.481/1000(※1) × 被保険者期間の月数(※2) × 3/4

(※1)1.の長期要件の場合で、1946年(昭和21年)以前に生まれた方は、生年月日に応じて7.302~5.562/1000とされます。
(※2)1.の短期要件の場合で、被保険者期間の月数は300に満たないときは300とされます。


5.中高齢寡婦加算
遺族基礎年金のところで触れましたが、一定の要件を満たした子のある妻には国民年金から遺族基礎年金が支給されます。
一方で、そのような子のない妻には遺族基礎年金は支給されません。
そこで、両者の不均衡を是正するために設けられたのが、中高齢寡婦加算です。

中高齢寡婦加算を受けるためには以下の要件を満たすことが必要となります。

(1)亡くなった人の要件
①短期要件および保険料納付要件を満たしている。
②長期要件を満たし、かつ、被保険者期間が240ヶ月(20年)以上である。

(2)妻の要件
以下のいずれかの場合となります。
①夫の死亡当時40歳以上65歳未満である。
②夫の死亡当時に40歳未満であり、40歳に達したときに、遺族基礎年金の要件を満たすこと生計を同じくしている。

(1)(2)の要件を満たした場合に、65歳に達するまで支給されます。

(3)加算額
遺族基礎年金の額(現在は786,500円)×3/4=589,900円

ところで、遺族基礎年金は2014年(平成26年)4月から父子家庭でも支給されるように制度改正されましたので、中高齢寡婦加算も将来的には夫が対象となるかもしれませんが、現状の要件は上記のようになります。

(4)経過的寡婦加算
上述のように中高齢寡婦加算は65歳に達するまで支給されますが、1956年(昭和31年)4月1日以前に生まれた65歳以上の妻の場合は、その後も一定額が加算されます。これを「経過的寡婦加算」といいます。

1956年(昭和31年)4月1日以前に生まれた方の場合、現在の国民年金制度が施行開始された1986年(昭和61年)4月1日時点で30歳以上となります。この人が旧制度の国民年金に任意加入していなかった場合等は、老齢基礎年金の額が中高齢寡婦加算の額に満たない可能性があります。これは、国民年金の被保険者期間は満期で40年(20歳~60歳)なのに対し、加入可能な期間が30年未満(30歳以上~60歳)となるからです。
そこで、65歳到達前後の年金額の低下を防止するため、経過的寡婦加算として一定額が加算されることとされました。

実際に加算される額は以下のようになります。
(3)の金額-老齢基礎年金の満額×生年月日に応じた率

(5)支給停止
中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算は、いずれも遺族基礎年金の支給を受けられる場合は、その間、支給が停止されます。
また、経過的寡婦加算は、障害基礎年金の受給権を有するときは、支給が停止されます。

6.失権
以下の事由により遺族厚生年金の受給者は失権します。
①死亡したとき
②婚姻をしたとき
③直系血族または直系姻族以外の養子となったとき
④離縁により、亡くなった方との親族関係が終了したとき


長くなりましたが遺族厚生年金については以上となります。
次回の年金記事は年金のお話(10)被保険者・受給権者が亡くなった場合の年金④併給です。

過去記事はこちら→年金のお話(まとめ)

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コメント

  1. 27年生まれで4月で64歳になります。一部分は64歳からもらえるのですか?その部分の支給額はずっと変わらないですか?

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