今回は年金のお話です。
前回の年金記事⇒年金のお話(20)年金給付と税金
今回は公的年金の年金額がどのようにして決まるのかについて簡単に解説いたします。
1.物価スライド
年金関係のニュースで「物価スライド」や「マクロ経済スライド」という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。
この物価スライドは、物価の変動に応じて年金額を変動させる制度です。
2004年(平成16年)の年金制度改正以前の年金の支給額の見直しは、物価の変動のみにより行われており、この場合は物価の変動と年金額の変動が一致するので、物価の上昇がそのまま年金額に反映されていました。
ところが、2000年(平成12年)の年金を改定する際に初めて物価の下落が生じ、年金額を引き下げなければならない事態となりました。このとき導入されたのが「物価スライド特例措置」です。
2.物価スライド特例措置
物価スライド特例措置とは、対前年の物価が下がったにもかかわらず、特例的に年金額を減額しないことを許容した措置です。
物価スライド特例措置は2001年~2002年(平成13年~14年)も引き続き物価が下落しましたが年金はそのまま据え置かれ、結果として年金の支給水準は物価水準を1.7%上回ることとなりました。
2003年、2004年(平成15年、16年)は物価水準にあわせて年金支給水準も引き下げられましたが、1.7%上回る水準は維持されたままとなりました。
3.マクロ経済スライド
2005年(平成17年)に新たに導入されたのがマクロ経済スライドです。
マクロ経済スライドとは、年金加入者の減少や平均寿命の延び、更に社会の経済状況を考慮して年金の給付金額を変動させる制度のことをいいます。
ただし、このマクロ経済スライドによる調整は、物価水準と年金額の水準が一致するまでは行われないこととなっています。
また、年金制度改正以降、さらに物価が下落して年金額を引き下げたら、その引き下げ時の物価水準を基準として年金額の見直しが行われています。
年金水準の推移(概念図)、厚生労働省HPより。
上図は年金の支給水準と物価水準の推移を示したグラフです。
上の実線が物価スライド特例措置による年金の支給水準で、下の点線が物価水準です(年金の本来水準)になります。
2006年(平成18年)と2011年(平成23年)、2012年(平成24年)に年金の支給水準が引き下げられていることがわかりますね。
そのため、物価水準と年金額の水準が一致するという条件を満たさないことから、マクロ経済スライドによる調整は現在も行われていません。
そして、2013年現在では年金の支給水準と物価水準の間に2.5%の乖離が生じています。
4.物価スライド特例措置の解消
この年金支給水準と物価水準との乖離については、今後3年間で解消することが予定されています。参考はこちら⇒年金制度の改正について(社会保障・税一体改革関連)の(3)[2]
平成25年10月▲1.0%、平成26年4月▲1.0%、平成27年4月▲0.5%、という段階で解消することとなりますが、つまりは支給額の減額です。その後は上述のマクロ経済スライド制度が適用されることとなります。
年金と物価の関係については以上となります。
次回の年金記事は未定です。
過去の年金記事はこちら→年金のお話(まとめ)
年金のお話(21)年金と物価の関係
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