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このカテゴリーでは高齢者の方に関連する医療制度に関して記載しています。
今回は2015年1月に予定されている高額療養費制度の改正についてです。
従来の高額療養費制度についてはこちらをご参照ください。
高齢者医療制度について(6)高額療養費制度①概要
高齢者医療制度について(6)高額療養費制度②70歳未満の高額療養費
高齢者医療制度について(6)高額療養費制度③70歳以上の高額療養費
高額療養費制度は、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないよう、医療費の自己負担に一定の歯止めを設ける仕組みです。
この歯止めとなる自己負担限度額が2015年1月から変わることとなります。
<高額療養費制度の見直し>
1.改正のポイント
改正の内容を要約すると次のようになります。(1)改正の対象は70歳未満の自己負担額である。
(2)年収約770万円以上(標準報酬月額53万円以上)の人は負担が増える。
(3)年収約370万円以下(標準報酬月額26万円以下)の人は負担が減る。
「標準報酬月額」は保険料の計算基準となる数値で、大体は4月~6月の月額給与の平均で決まるものです。高齢者医療制度について(15)保険料の計算で簡単に解説してますので、詳細はそちらをご参照ください。
2.具体的な見直しの内容
「負担が増える」「負担が減る」と言っても具体的にはどう変わるのか?以下の表にまとめてみました。
同じ内容のものを厚生労働省のHPでも見ることができます。⇒社会保障・税一体改革(厚生労働省)の社会保障・税一体改革関連施策にある「高額療養費制度の見直し」
70歳未満の1か月あたりの自己負担限度額 | |||
---|---|---|---|
改正前 | 改正後 | ||
上位所得者 (健保) 標報53万円以上 (国保) 所得600万円超 |
150,000円+ (医療費-500,000円)× 1% (多数回該当:83,400円) |
年収約1,160万円~ (健保) 標報83万円以上 (国保) 所得901万円超 |
252,600円+ (医療費-842,000円)× 1% (多数回該当:140,100円) |
年収約770万~ 約1,160万円 (健保) 標報53万~79万円 (国保) 所得600万~901万円 |
167,400円+ (医療費-558,000円)× 1% (多数回該当:93,000円) | ||
一般所得者 (上位所得者・低所得者以外) |
80,100円+ (医療費-267,000円)× 1% (多数回該当:44,400円) |
年収約370万~ 約770万円 (健保) 標報28万~50万円 (国保) 所得210万~600万円 |
80,100円+ (医療費-267,000円)× 1% (多数回該当:44,400円) |
~年収約370万円 (健保) 標報26万円以下 (国保) 所得210万円 |
57,600円 (多数回該当:44,400円) | ||
住民税非課税 | 35,400 | 住民税非課税 | 35,400 |
「医療費」は負担割合をかける前の金額です。通常、病院等の窓口では3割負担となりますが、その3割を計算する前の金額です。
改正前の上位所得者の自己負担限度額は「150,000+(医療費-500,000)× 1%」となっていますが、これは「医療費のうち50万円までは3割負担、50万円を超える部分は1%負担でいいよ」ということを意味しています。
これが改正後は上位所得者は「558,000円までが3割負担」、上位所得者の中でもさらに上位の人は「842,000円までが3割負担」ということになります。
「多数回該当」は同一世帯で診療月の前11カ月間にすでに3回以上高額療養費の支給を受けている場合です。
改正の内容は以上となります。