前回の雇用関係の記事⇒高齢者と雇用(5)高年齢求職者給付金
厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げにより60歳以上無年金時代に入ったことなどもあり、「雇用」は関心の高いテーマになっているかと思います。
今回は雇用のセーフティネットとして代表的な雇用保険の給付の中で、60歳から65歳に達するまでの雇用を援助・促進する給付である「高年齢雇用継続給付」のうち、「高年齢雇用継続基本給付金」について解説します。
<高年齢雇用継続基本給付金>
1.高年齢雇用継続基本給付金とは
高年齢雇用継続基本給付金とは、失業手当をもらわずに働いている60歳以上の人たちの雇用を援助、促進するための給付です。
2.支給対象者
以下の要件を満たした人に支給されます。
(1)雇用保険の一般被保険者で、60歳~65歳に達するまでの人
(2)60歳になった日を基準として、1年以上間を空けず継続して5年以上働いている人
(60歳時点で5年に満たない場合は、5年に達した月から)
上記要件に該当する人について、その月の賃金が要件に該当する場合に、高年齢雇用継続基本給付金が支給されることになります。
なお、(1)の要件については、厳密には一般被保険者のほかに高年齢継続被保険者も含まれますが、これは高年齢継続被保険者は65歳に達した「日」から高年齢継続被保険者となるのに対し、高年齢雇用継続基本給付金は65歳に達した日の属する「月」まで給付されるので、最終月については一般被保険者の期間と高年齢継続被保険者の期間が混在するためで、実質的には一般被保険者のみが対象となります。
3.賃金の要件
2.の要件に該当する場合に、60歳に達した日を離職日とみなして算定した賃金日額(これを「みなし賃金日額」といいます)を基準として、各月の賃金が以下の要件を満たす場合、その月が支給対象月となります。
(1)その月の賃金がみなし賃金日額×30日×75%を下回る。
(2)その月の賃金が341,542円未満である。
4.支給額
2.と3.の要件を満たす場合に、以下の賃金が支給されます。
(1)支給対象月の賃金がみなし賃金の61%以上75%未満
支給対象月の賃金×15%以下の一定率
(2)支給対象月の賃金がみなし賃金の61%未満
支給対象月の賃金×15%
ただし賃金と給付金の合計額が支給限度額(341,542円)を超過する場合は、その超過額は支給されません。
また、基本給付金が1,848円を下回る場合は、そもそも支給されないことになります。
5.支給申請手続
高年齢雇用継続基本給付金を受給する人は、支給対象月から4ヵ月以内に事業所の所在地を管轄する職安に出頭し、「高年齢雇用継続給付受給資格確認票」「高年齢雇用継続給付支給申請書」「60歳到達時等賃金証明書」を提出することが必要になります。
ただし、この手続きは労使協定に規定がある場合は、事業主が代理で行います。
6.老齢厚生年金との調整
高年齢雇用継続基本給付金の支給対象者が老齢厚生年金を支給されている場合、年金の一部が支給停止されるという調整がされます。
具体的には標準報酬月額の6%、つまり高年齢雇用継続基本給付金の4割に相当します。
この点は年金の記事でも解説しましたので、ご参照ください⇒年金のお話(11)働きながら年金をもらう人に関する制度②高年齢雇用継続給付
高齢者と雇用(6)高年齢雇用継続基本給付金
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