前回の雇用関係の記事⇒高齢者と雇用(3)失業手当(基本手当)の日額の計算方法
厚生年金の支給開始年齢の引き上げを受けて、高齢者の方々にとってもそうでない方にとっても「雇用」は関心の高いテーマとなっていると思います。
今回は雇用のセーフティネットとして代表的な雇用保険の中でも代表的な給付である求職者給付の基本手当(いわゆる失業手当)について、実際どれぐらいの給付がもらえるのかについてまとめました。
ここから先ではわかりやすさを重視して「失業手当」で呼称を統一します。
<失業手当の支給日数>
1.算定基礎期間
算定基礎期間は給付日数を決定する上で考慮される「被保険者であった期間」です。
つまり離職するまでに働いていた期間を指します。
この期間については必ずしも同じ職場で働いていることを要さず、複数の期間が通算されますが、1年以上空白が空いた以前に働いていた期間や、すでに失業手当を貰った期間については通算されません。
2.受給要件
失業手当が支給されるのは以下の要件を満たしている場合です。
(1)原則
過去2年間に通算して12ヶ月以上働いている
(2)倒産、解雇など特別な理由がある場合
過去1年間に通算して6ヶ月以上働いている。
自己の責任によらない場合の離職については、要件が緩和されています。
これは「特定理由離職者」または「特定受給資格者」に該当する場合となりますが、ここでは詳細を省略します。
3.給付日数
給付日数は離職理由や年齢によって異なります。
なお65歳以上になっても継続して働いている場合は、雇用保険の一般被保険者ではなく「高年齢継続被保険者」となるので、失業手当は支給されません。
高年齢継続被保険者に対する給付については後日に記載します。
(1)原則
算定基礎期間⇒ ↓年齢 | 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 |
65歳未満 | 90日 | 120日 | 150日 |
(2)倒産や解雇の場合
これは「特定受給資格者」に該当する場合となります。
自己の責めによらない理由で離職を余儀なくされた場合は、手厚い給付日数が設けられています。
「自己の責めによらない理由」なので、自己都合退職などは除かれます。
算定基礎期間⇒ ↓年齢 | 1年未満 | 1年以上 5年未満 | 5年以上 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | |
30歳以上35歳未満 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
35歳以上45歳未満 | 240日 | 270日 | |||
45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
(3)就職困難者
身体障害者等、そもそも就職が困難な人の場合は、さらに手厚い日数が設けられています。
算定基礎期間⇒ ↓年齢 | 1年未満 | 1年以上 |
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳以上65歳未満 | 360日 |
(4)受給期間
失業手当を受給できる期間は、原則として離職の日の翌日から起算して1年間です。
ただし妊娠、出産、育児等でそもそも就職できない日数がある場合は、その分加算されます。また、支給日数が300日を超える場合はその分配慮されています。
4.待期、支給制限
失業手当は離職してすぐに職安にかけこめばただちにもらえるのかというと、そうではなく、一定の支給停止期間が設けられています。
(1)待期期間
基本手当は職安で求職の申し込みをした後、失業している日が7日に満たない場合は支給されません。この7日間を待期の期間といいます。
なお、待期というのは誤字ではなく法律上こういう名称になっているようです。
(2)離職理由による支給制限
・被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合
・正当な理由がなく、自己の都合により退職した場合
この場合は、待期期間満了後、さらに1ヶ月以上3か月以内の期間について支給が制限されます。
5.まとめ
大雑把ですが、失業手当の給付日数については以上となります。
なお、失業手当はあくまで失業期間中の生活保障が目的なので、受給期間目一杯手当を貰おう!と考えるのは望ましくありません。
支給期間の途中で再就職した場合は、支給残日数に応じて再就職手当を貰うことができます。これについてもまた後日機会があればまとめようと思います。