←「高齢者医療制度について(8)任意継続被保険者とは」前の記事へ
次の記事へ「高齢者医療制度について(10)健康保険の傷病手当金」→
前回の医療制度関係の記事⇒高齢者医療制度について(8)任意継続被保険者とは
過去の社会保険関係の記事で「被扶養者」という言葉を何回か使いました。
扶養とは独立して生計を営めない人の生活を他者が援助することをいいます。言葉の意味については漠然と理解されている人は多いとは思いますが、それでは実際に健康保険においてどれぐらいの範囲までが「被扶養者」と認定されるのでしょうか。
今回はその点を解説しようと思います。
<健康保険の被扶養者の範囲>
1.被扶養者の範囲
被扶養者の範囲についての条文は次のようになります。
まずは内容を確認してみましょう。
法律上はこのように定義されていますが、これだとちょっとわかりづらいので、もう少しわかりやすくまとめると次のようになります。
被保険者に生計を維持されている | ●被保険者の直系尊属 ●配偶者(内縁の妻を含む) ●子 ●孫 ●弟妹 | |
---|---|---|
被保険者と同一世帯に属している | ●3親等内の親族 ●内縁の妻の父母及び子 ●内縁の妻の死亡後のその父母及び子 |
なお、後期高齢者医療制度の対象となる75歳以上の方は、それぞれが後期高齢者医療制度の被保険者となるので、上記の被扶養者の範囲には含まれないことになります。
以下で表中の言葉をもう少し噛み砕いて説明します。
・直系尊属
親、祖父母、曽祖父母という、家系図上の縦の流れを「直系」といい、自分を中心とした父祖の代を「直系尊属」といいます。子や孫の場合は「直系卑属」といいます。
直系尊属には養父母も含まれます。
・3親等内の親族
親等とは親族関係の遠近を示す単位です。
父親が1親等、父親の子である兄は2親等、兄の子である甥は3親等、というように数えていきます。
・同一世帯に属している
この場合は、住居・家計を共同にしていることをいい、必ずしも同一戸籍内にあることは求められていません。また、被保険者が世帯主であることも必要とされてはいません。
・生計を維持されている
被保険者の収入によって生活が成り立っていることです。
この認定に関しては以下で記載します。
2.主に被保険者の収入により生活が維持されているかどうかの認定
被扶養者として認定されるかどうかは同一世帯に属しているか否かによって異なります。
(1)認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合 | |
---|---|
●認定対象者の年間収入が130万円未満である、かつ、 ●認定対象者の年間収入が被保険者の年間収入の2分の1未満である | |
(2)認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合 | |
原則 | ●認定対象者の年間収入が130万円未満である、かつ、 ●認定対象者の年間収入が被保険者からの援助額より少ない |
●60歳以上、または、 ●障害厚生年金の受給者 |
●認定対象者の年間収入が180万円未満である、かつ、 ●認定対象者の年間収入が被保険者からの援助額より少ない |
以上の要件を満たす場合は、健康保険における「被扶養者」に該当することとなります。
3.各医療保険における被扶養者の取扱い
ここで各医療保険における被扶養者の取扱いを確認します。
保険の種類 | 被扶養者の取扱い |
---|---|
健康保険 | 上述の基準に該当する人は被扶養者として扱われる。 被扶養者は何人であっても保険料は変動しない。 |
国民健康保険 | 扶養の概念はない。 保険料は世帯の加入者数に応じて変動する。 |
後期高齢者医療制度 | 扶養の概念はない。 保険料は世帯の加入者数に応じて変動する。 |