←「高齢者医療制度について(9)健康保険の被扶養者の範囲」前の記事へ
次の記事へ「高齢者医療制度について(11)療養の給付に係る一部負担金」→
前回の医療制度関係の記事⇒高齢者医療制度について(9)健康保険の被扶養者の範囲
「高齢者医療制度について」のカテゴリーでは、後期高齢者医療制度や健康保険、国民健康保険等、医療制度全般についての解説しています。
前回は被扶養者の範囲について解説しました。
健康保険の被扶養者であれば「家族療養費」や「家族訪問看護療養費」として、被保険者と同様の給付を受けることが可能です。ただし一部被保険者でないと受けられない給付があり、それが「傷病手当金」です。
今回はその「傷病手当金」について簡単に解説いたします。
<健康保険:傷病手当金>
1.対象となる制度
「傷病手当金」は健康保険と船員保険では要件を満たせば必ず支給される給付ですが、国民健康保険や後期高齢者医療制度では条例や規約で定めることにより給付される任意給付とされています。
なので基本的には健康保険と船員保険のみが対象となる制度となります。
2.傷病手当金とは
傷病手当金とは、被保険者が傷病のため就労することができず、報酬が得られない場合に、療養期間中の生活を保障するための給付です。
3.支給要件
傷病手当金の支給を受けるためには、以下の要件をすべて満たしていることが必要です。
要件 | 留意点 |
---|---|
①業務外の病気やケガである | 業務上に起因する病気やケガは労災保険の対象となります。 |
②療養中である | 健康保険で診療を受けられる範囲の療養であればよく、自費診療や自宅での静養も含まれます。 健康保険の対象外となる、たとえば美容整形などのための療養は対象とはなりません。 |
③労務に服することができない | 被保険者が今まで従事していた業務に従事できない状態です。実際に労務不能であるか否かは、医師の意見や被保険者の業務内容等を考慮して判断されます。 |
④休業期間が3日を超える | 連続3日間休業していることが必要です。この休業期間は、公休日や祝祭日、年次有給休暇の取得日も含まれます。 なお、船員保険の場合はこの要件はなく、休業初日から傷病手当金が支給されます。 |
4.支給額
傷病手当金の支給額は、1日につき標準報酬日額の3分の2、となります。
標準報酬日額は標準報酬月額の30分の1に相当する金額です。
5.支給期間
支給期間は、1つの傷病ごとに、その支給を始めた日から起算して1年6ヶ月までとなります。
6.報酬等との調整
報酬や障害厚生年金等を受けられる場合は、傷病手当金は支給されません。
ただし、報酬等の額が傷病手当金の額より少ないときは、その差額が支給されます。
【例】
傷病手当金 :7,000円
障害厚生年金日額:5,000円
報酬日額 :4,000円
障害厚生年金日額と傷病手当金の差額:2,000円
報酬日額と傷病手当金の差額:3,000円
⇒2,000円が支給される
7.支給手続
傷病手当金の支給を受ける場合は、以下の書類を保険者に提出することが必要となります。
書類 | 内容 |
---|---|
傷病手当金申請書 | 協会けんぽの場合はこちらに様式があります。 |
医師又は歯科医師の意見申述書 | 被保険者の疾病または負傷の発生した年月日、原因、主症状、経過の概要、労務に服することができなかった期間について記載されます。 |
事業主の証明書 | 労務に服することができなかった期間、その期間中の報酬の支払いについて記載されます。 |
傷病手当金については以上となります。