前回⇒高齢者医療制度について(11)療養の給付に係る一部負担金
「高齢者医療制度について」のカテゴリーでは、後期高齢者医療制度や健康保険、国民健康保険等、医療制度全般についての解説しています。
今回は健康保険の「協会けんぽ」と「組合健保」について、今までその2種類があることには触れていますが、これらにはそもそもどのような違いがあるのかについて解説します。
<協会けんぽと組合健保の違い>
1.協会健保と組合健保
健康保険はサラリーマンを対象とした医療保険ですが、協会健保と組合健保で異なるのはその保険者です。
協会健保は「全国健康保険協会」が保険者であるのに対し、組合健保は「健康保険組合」が保険者となります。
2.全国健康保険協会とは
全国健康保険協会(以下、協会)は、政府により設立され、健康保険組合に加入していないサラリーマンとその家族を対象として健康保険事業を行う公法人です。
都道府県ごとに支部が置かれ、地域の医療費を反映した保険料率を設定するなど、都道府県単位での運営が行われています。
協会の役員は理事長1人、理事6人、監事2人とされ、理事長と監事は厚生労働大臣によって任命されます。
協会が設立されたのは2008年10月で、それまでは社会保険庁により運営されていました。
3.健康保険組合とは
健康保険組合は一つの企業または複数の企業の共同によって設立され、その企業の社員とその家族を対象として健康保険事業を行う公法人です。
健康保険組合を設立する場合は、原則として
①被保険者が常時700人以上(共同設立の場合3000人以上)
②健康保険組合を設立する事業所ごとに、被保険者の2分の1以上の同意を得る
③厚生労働大臣の認可を受ける
という要件を満たすことが必要となります。
4.被保険者視点での協会健保と組合健保の違い
(1)保険料
協会健保の場合、都道府県単位で保険料率が設定されます。この保険料率は、都道府県ごとに財政の均衡を保つことができるよう、地域の医療費を反映したものとして、3%~12%の範囲内で設定されます。
組合健保の場合、保険料率は組合が自主的に定めます。保険料率の範囲が3%~12%であることは協会健保と同様です。
(2)付加給付
通常の保険給付については協会健保も組合健保も同じですが、組合健保の場合、規約で定めることにより、法定の保険給付以外の保険給付を通常の保険給付の上乗せで行うこともできます。これを付加給付といいます。
たとえば高額療養費の自己負担額を安くしたり、出産育児一時金について法定の金額よりも多くもらえる、といったものがあります。
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