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高齢者医療制度について(1)高齢者医療制度の歩み

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今回から何回かにわたって日本における高齢者医療制度についての解説を簡単に行っていくことにいたします。
基本的には厚生労働省のHPの「“高齢者医療制度”について」の流れに沿ったものとなります。
第1回目は高齢者医療制度の歴史についてです。

<高齢者医療制度の歩み>
医療
1.国民皆保険
日本の医療保険の始まりは1922年(大正11年)に制定された健康保険法です。
当初は工場などで働く肉体労働者の組合から始まったこの制度は、徐々にその対象を広げていきました。
1938年(昭和13年)に国民健康保険法が施行され、1958年(昭和33年)に市町村運営方式となり、それを足掛かりとして1961年(昭和36年)には国民すべてが公的医療保険に加入する「国民皆保険」が達成されました。
しかし、医療機関での自己負担は年齢に関係なく、会社員など健康保険制度に加入する本人は定額、被扶養者は5割、国民健康保険加入者は3割などでした。
これでは、医療機関に係る比率の高い高齢者に自己負担が重くのしかかり受診が進みません。そこで、導入されたのが老人医療費の無料化です。

2.老人医療費無料の時代
1973年(昭和48年)1月、老人医療費の自己負担分を老人福祉法で負担するという形で、老人医療の自己負担が無料になりました。
といっても、自治体レベルではそれ以前から老人医療費の無料化は導入されていて、最初に老人医療費の無料化がなされたのは1960年(昭和35年の岩手県沢内村(現西和賀町)です。これに続いて1965年(昭和40年)以降、地方自治体で「福祉の一環」として無料化や負担軽減措置が広がりました。
当時は高度成長がピークを迎えつつある時代です。
このとき政権を担当していた田中角栄内閣は1973年を「福祉元年」と位置づけ、社会保障の大幅な拡充を図りました。その一つが老人医療費の無料化でした。

この無料化によって、医療機関の待合室がサロン化といった弊害をもたらし、老人医療費の増加により高齢者の多い国保の運営が厳しくなるといった問題も発生しました。そのため、無料化から10年後、新たに制定されたのが「老人保健法」です。

3.老人保健法
老人保健法は1983年(昭和58年)2月に施行されました。
これにより、高齢者の自己負担は外来1ヶ月400円、入院1日300円(2ヶ月限度)とすることとされました。患者負担を設定することによる老人医療費の抑制が目的です。
また、上記の患者負担の導入の他に、運営主体を市町村とし、その財源は保険者(健康保険組合等)からの拠出金と公費(税金)でまかなわれることとなりました。

しかし、以下のような問題点が生じました。
①保険料を納めるところ(保険者)とそれを使うところ(市町村)が分離しているため、財政・運営責任が不明確。
②若者と高齢者の費用負担関係が不明確。
③加入する制度や市町村により保険料額が異なる。

また、少子高齢化の進展に伴う高齢者医療費の増加を避けることはできず、1999年(平成11年)には健保組合の老人保健制度への拠出金不払い運動にも発展しました。

4.後期高齢者医療制度の創設
2000年(平成12年)の参議院・国民福祉委員会付帯決議で「老人保健制度に代わる新たな高齢者医療制度等の創設については、早急に検討し、平成14年度に必ず実施すること」が決議されましたが、2002年(平成14年)までに新制度はまとまりませんでした。
その後、紆余曲折を経て、2006年(平成18年)に高齢者の応分な負担と医療費の適正化を目的にした医療制度改革法が成立し、2008年(平成20年)4月に老人保健制度に代わる75歳以上を対象とした新制度が発足しました。これが後期高齢者医療制度です。
この制度創設までの抜本改革の議論に10年の歳月を要することとなりました。


後半は駆け足となりましたが、今回はここまでとして、制度の内容等の詳細は次回以降にいたします。


次回⇒高齢者医療制度について(2)老人保健制度からの変更点

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